子と平和育てる使命も全う〜宮尾監督が映画製作から伝えたい事語る

2018-02-03 07:00 am by 須坂新聞

お知らせ icon 元ゼロ戦パイロットで幼児教育に半生をささげた故原田要さんのドキュメンタリー映画を監督・構成・編集した宮尾哲雄さん(67、須坂市高畑町)は先ごろ、市民学園公開講演会(市中央公民館)で「戦争体験を伝える映画製作の裏表」と題して語った。「戦争とは国のために人の命を奪う殺し合いだと原田さんは繰り返した。人の命に優劣はない。みんなに生きる権利と価値があると原田さんから教えられ、伝えたかった」と強調した。
 映画「原田要平和への祈り〜元ゼロ戦パイロットの100年」(約85分)は、太平洋戦争中、日本海軍の主力戦闘機ゼロ戦に搭乗した原田さん(長野市)の戦争体験と波乱に満ちた生涯を通じ、あの戦争とは、時代とはをあらためて問い直した。昨年、長野相生座・ロキシー(長野市)で上映され、観客動員延べ3,500人の記録的ヒットになったという。
 戦後、子供を育てることが「罪の償いになる」と考えた原田さんは、50歳で託児所を始め(後、幼稚園園長)50年間、幼児教育に情熱を注いだ。
 75歳になって講演などで自らの体験を話し始めた。「それは一大決心が必要だったに違いない。きっかけは、湾岸戦争の、テレビゲームのような戦争との表現。戦争はゲームとは違う。残酷ですべてを奪う。取り返しのつかない行為である戦争を、証言しなくてはならない覚悟が湧き上がったという」
 晩年はかつての敵国の米英を訪問し元兵士と交流。ハワイやミッドウェーなどかつての激戦地を訪ね、亡くなった兵士の慰霊と世界平和を訴え続けた。
 原田さんは平成28年5月3日、99歳9カ月で亡くなった。宮尾さんは98歳の原田さんのシルキーホールでの講演(26年9月の平和を守る市民のつどい)を聴いて感銘を受け、原田さんを訪ね、亡くなるまで取材を重ねた。
 「100歳のお祝いに映画をプレゼントしたいと考えていたが果たせなかった。原田さんが天国から見守り、導き、出来上がった映画だと実感している。戦場で母親の存在の大きさを知った原田さんは、子供が戦争のない世の中をつくると確信している。体や命が何より大事だということを子供に徹底的に教えてほしい。キーパーソンは命を育むお母さんだと原田さんはおっしゃった」
 映画がヒットした要因について、宮尾さんは1.時代と真摯(しんし)に向き合った原田さんの人物の大きさと体験者しか語れない証言の重み 2.ミサイルが飛ぶ時代状況も影響している―と分析した。
 最後にテレビ・ラジオの視聴者や新聞・雑誌等の読者が本当のことを知るためには「メディアリテラシー(情報の正しい評価と活用能力)をつけることが大事だ。主体的に、批判的に情報を判断する力は、今後ますます大事だ」と指摘した。
 講師は昭和25年生まれ。須坂高―同志社大卒。NBS長野放送時代は報道部記者・デスクとしてニュース番組に従事。ドキュメンタリー番組では数々の賞に輝いた。平成26年に退職。現在フリーディレクター。

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