2017-12-02 07:00 am by 須坂新聞
戦争を体験した須坂市八重森町の区民ら有志一同が執筆した『戦時体験記』が先ごろ、森川千代吉編集人代表(故人)の長女久子さんの夫小林繁雄さん(長野市南堀)の力で発行された。小林さんは「各執筆者の原稿を義父が清書し、目次も口絵もできていたので印刷会社へ発注した。8月に88歳で他界した義母(千代吉さんの妻嘉子さん)に生前本を見せることができ、約束を果たせた」と話す。
執筆を呼び掛けたとみられる編集人は、佐藤庄右エ門、佐藤治兵衛、松沢正雄、小宮山忠助、森川千代吉の各氏(いずれも故人)。
執筆を依頼し、約50人が寄せた原稿の編集が終わったのが平成7年1月。編集人代表の森川さんは同年4月9日に他界。享年81歳。出版の直前で計画が宙に浮いたようだ。
千代吉さんの妻嘉子さんは八重森で一人暮らしを続け、平成20年12月に長野市の高齢者マンションに移った。空き家になった自宅を処分した時に肉筆原稿が発見され、子供たちに投げかけられたが、遠方に住む関係でそのままになっていた。
長女の夫、小林さん(71)は長野市職員を退職した。「原稿がほぼできていたので埋もれてはもったいない」と友人の印刷会社へ相談。印刷会社を紹介してもらい発注。今年6月、病床の義母に完成した本を報告した。
「意識はあるが、声は出ない。目と目で会話し、よくやってくれたと受け止めた。義父も喜んでいると思う」(小林さん)
体験記は「太平洋戦争は悲劇の沖縄本土決戦、広島・長崎の原爆投下で終結をみた。生死を分けた戦場に実際に従軍した一兵士の立場からみた戦闘の実態を記録したいとの思いから原稿を募集した」(あとがき)と記す。
はしがきには「戦いは戦場に臨んだ者のみでなく、子供たちをはじめ多くの非戦闘員まで巻き込んだ残酷非道の極まりないもの。貴重な戦時体験も風化しつつある。薄れゆく平和意識を呼び起こし、再び戦争を繰り返してはならない」と編集人の意思を明記する。
小林さんは「義父の死後22年が経過し大変遅くなったが、義母の遺言として引き受けた。義父は生前戦争の話をしなかった。どの人もリアルに書いてあり、各執筆者の原稿を清書した義父の文章力はすごい。互いに傷つく戦争は二度とやってはいけない。これに尽きる」と話す。
A5判。170ページ。300部印刷。八重森区民や執筆関係者、須坂市、長野市に寄贈。残部は1部500円で販売する。小林さん
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