盆栽作風展で念願の日本一〜父の一周忌に共に手がけた作品で

2016-11-05 07:00 am by 須坂新聞

お知らせ icon 須坂市高橋町の盆栽園・勝樹園の井浦貴史さん(39)の作品「雷(いかずち)」が、このほど開かれた第42回日本盆栽作風展(組織委員会主催)で、全部門を通じて最高賞の内閣総理大臣賞を受賞した。昨年12月に亡くなった父弘勝さんと共に長年にわたって手がけた作品が、プロによる品評会で念願の日本一に輝いた。「おやじの仕事の集大成として、この作品を仕上げたかった。一周忌に、これまでやってきたことが認められて良かった」と喜びをかみしめている。
 作風展には、8部門に全国のプロの盆栽家から198点が出品された。井浦さんは8回目の出品で、これまで部門トップ賞などを受賞していた。
 「雷」は樹高約1mのハイビャクシン。ゆったりとうねるように生えている茶色い幹や枝、緑の葉に、枯れて白く残った幹が生き物のように絡み付いて一体となっている。「生と死が融合した、生ける芸術ができた」(井浦さん)という。
 約20年前に弘勝さんが入手した推定樹齢600〜700年の天然の原木を盆栽に仕立てた。原木は樹高約2mあり、幹や葉が扇形に伸びていた。それを切断し、長年かけて鉢の中で育てながら、根や枝を接いだり、針金矯正などで茶色い幹をうねらせて白い幹に巻き付かせるなどした。併せて、白い幹も自然な風合いに削るなどして全体の形を整えた。
 同時に、日々の管理が重要で、盆栽の状態を常に把握しながら、虫害や病気への対応、日照調整、水やり、樹の手入れなどを行う。「常に目を配り、手を入れていないと維持できない。適切な管理やタイミングの見極めは毎日の経験でしか身に付かない」という。
 井浦さんは高校卒業後、埼玉県の盆栽家の元で5年間修行し、20代半ばから弘勝さんと働く中で、培養管理を熟知する父からそうしたことを学んだ。また、山に出かけて樹木を観察したり、さまざまな盆栽を見るなどして感性を磨いている。
 鉢の中で根や枝を接いで盆栽を仕立てる技術は親子で確立し、最先端にある。井浦さんは技術と実績を備えた国内トップクラスの若手盆栽家として、今後が期待されている。
 「盆栽は継承品。作るというと大げさ。その盆栽の良さを生かして、技術と共に次の世代につなげていきたい」と話す。
 昨年から日本盆栽協同組合甲信支部長を務める。今後は若手育成や海外への情報発信にも力を入れる考え。
 作風展の入賞作品は12月15〜18日に東京・上野グリーンクラブで展示される。

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