米中の動向見据え共存探って〜国際政治学者の佐々木文子さんが講演

2013-01-20 07:00 am by 須坂新聞

お知らせ icon 須坂商工会議所青年部OB会(岩井隆己会長)は先ごろ、須坂市八重森町出身の国際政治学者佐々木文子さん(米国)をシルキーホールに招き、「新春講演会」を開いた。演題「新しい米中政治と日本の行方―今、世界で何が起きているのか」の中で講師は「米国の対日政策は米中関係に依存している。つまり米国は日本を使って中国からいかに利益を引き出すかを考えている。日本も米中の動向をよく見ていくことが大事」と述べた。
 約170人が聴講した。以下、講演要旨。
 国際政治と国内政治の一番の違いは政府があるかないか。国際政治には政府がなく、警察がなく、法は守られない。自助が基本で、力(武力、経済力、文化力)の強いものが優位性を保つ。
 中国は力を使って尖閣問題に出てきている。国際政治では相手を自分の思うように動かせる力が物事を決めるので、力がある国が力を使うのは当然のことだ。昔は日本にかなわないと思っていた。今は強く出ても大丈夫と思っているからだ。
 重要なことは、国連安全保障理事会常任理事国になること。米・ロ・中・英・仏の5カ国は、自国に都合の悪い問題は却下できる。もう一つは核兵器を持つこと。核を保有するということは他国から攻められないということ。
 米国は、経済の立て直しや貧富の格差など国内問題の解決を優先するので、国際問題への介入は減っていくとの見方が強い。WTO(世界貿易機関)やIMF(国際通貨基金)、映画、音楽、ファッション、アート、科学技術などよくも悪くも軍事力と経済力を背景にして米国がルールを世界に押し付けている。対中包囲はルール決定権を確保したい米国の方向で、親米国家の拡大や中国の民主化誘導も目指している。
 一方、中国は13億人を統治するための国内問題が山積している。貧富の格差、汚職、公害、人権侵害、領土問題など。1日に400件を超える反政府暴動が起きていて、対外政策に時間を割いている暇はそんなにない。尖閣や靖国問題は国民の不満をそらすために利用している。
 日本の課題は、確実に将来、世界最大の経済大国になるといわれる中国となんとか共存していく道だ。ルールを守る国に誘導しながら。いざという時に助けてくれる友好国を増やし、経済的相互依存を高め、日本の価値を高めることもこれからの方向だ。(要旨)
 佐々木氏は日野小―墨坂中―須坂高校―青山学院大学国際政治経済経営学部卒。同大学修士課程修了。米ジョンズホプキンス大学高等国際関係大学院修士課程―同博士課程修了。2006年に米アメリカン大学・大学院非常勤講師、06年〜07年に米ネバダ大学ラスベガス校助教授、07年〜11年に米セントエドワーズ大学助教授を歴任した。

2013-01-20 07:00 am by 須坂新聞 - 0 コメント



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