「客の心つかんだ観光農園」で全国農業コンクール出場

2012-06-23 09:44 am by 須坂新聞

農業 icon 須坂市高畑町で観光農園を営む返町卓郎さん(63)は第61回全国農業コンクール(毎日新聞社など主催、農林水産省など後援)で活動報告する全国代表の20人に選ばれた。評価されたのは、果樹の直売から観光農園に切り替え、地域の農業振興に貢献。また、農家としていち早くパソコンを導入、ダイレクトメールで顧客確保を図るなど、経営安定の基礎を作るなど、新しい農業を提案している。
 コンクールは7月23〜25日、島根県出雲市で開催。創意工夫に満ちた経営手法や技術力を発表することで、日本の農業の発展や農村地域の活性化につなげていく。返町さんは「地域と共に歩み、お客の心と味をつかんだ観光農園〜本物を消費者にをモットーに」と題して発表する。返町さんに出場への感想やこれまでの活動、今後の方針などを聞いた。
■今回の感想は―
 うれしいような、恥ずかしいような気持ち。須坂市には私より立派な農業者がたくさんいる。その人たちの蓄積や基盤があって選ばれたと思う。須坂の代表として恥ずかしくない発表をしたい。
■観光農園に切り替えた理由は―
 40年前、民間企業を退職して家業の果樹栽培を継いだ。当時7割ほど市場に出していたが、思った通りの値段で売れないと思い、すべて直売に切り替えた。だが味が良ければ売れるが、悪ければ売れない。全国的に果樹の生産や直売所の数が増えると販売も頭打ち。打開すべく、高畑観光農園組合で山梨県を視察、観光農園のノウハウを学んだ。直接収穫できる「もぎ取り」は人気となった。農業を取り巻く環境は厳しいが、観光農園は新たな活力を与える可能性があると思う。
■今回評価された点について―
 第一に観光農園が注目されたと思う。その上で農家としてはいち早くパソコンを導入、顧客データを蓄積。ホームページ、ブログを更新し、次年度からネット販売を目指す。毎年発送するダイレクトメールで顧客確保を図り、宅配型の贈答販売へと販売方法を多様化、経営安定の基礎となった。
 また、防霜ファンを導入、減農薬や有機肥料を中心とした土壌改良などに取り組んだ。皆さんと同じく客のニーズを追求。ブドウは巨峰から種無し、皮ごと食べられる品種へ。リンゴもフジから3兄弟など品種を増やした。現在リンゴ150a、ブドウ120aを妻幸子、長男の浩司、晴奈夫妻と共に営む。今では需要に生産が追い付かない状態。
■活動を進める上で力となったのは―
 組織の力。市などが作ったグリーンツーリズム研究会で初代会長を務めた。県内外の消費者や地元保育園、小中学校、高校生の農業体験を積極的に受け入れた。もぎ取りだけでなく農作業を体験することで、農業への見方も変わると思う。果樹園の役割は農業に生きる素晴らしさを伝えることで、それが新たな観光資源化につながると思う。現在は信州フルーツ王国振興会会長も務めている。
■今後の方針は―
 後継者も育ち、規模拡大を図る。ともかく本物を消費者に届け、客の心をつかみたい。また、農業を核とした六次産業化を目指したい。農家による商品開発・販路拡大、産地に応じた生産流通や環境に優しい農業の構築は大切で、県にも支援を求めたい。今後は観光農園、地域を足場にしつつ、より広い視野に立った活動を展開していきたい。
   ◇  ◇
 なお、長野県内からの選出は2年ぶり、須高からは昭和51年以来36年ぶり4度目の選出となる。審査員で農学博士の志村勲さん(東京都)は「古い産地を新しい感覚で発展させた。アイデア、実行力が素晴らしい」と評価していた。

2012-06-23 09:44 am by 須坂新聞 - 0 コメント



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