ソチ五輪に向けて、須坂発の「スケルトン」開発を

2012-01-01 07:01 am by 須坂新聞

工業・商業 icon 2014年のソチ冬季オリンピックに向けて、イノベートSUZAKA(異業種の技術連携/事務局=須坂市工業課)は、須坂発のスケルトン用品の開発に取り組んでいる。幸高町のナツバタ製作所(小林豊社長、46)が設計、松川林間工業団地の美須弥工業(武内優社長、47)が製造、データ分析を国立長野高専が担当。昨年11月に試作品が完成、長野市のスパイラルで試験的に滑走した。今後は3者が連携して、より精度を高めて、夢の実現に向けてまい進する。
 スケルトン用品開発のきっかけは、ナツバタ製作所が昨年7月、市内の知人からスケルトン選手の生駒良弘さん(長野市)を紹介されたことによる。生駒さんから「ソリのランナー(刃)を工夫して」と依頼され、小林社長は快諾した。
 ランナーは氷面に直接触れる部分で、通常は2〜3㎜の溝が2本ある。小林社長は、排水性を高める、氷の抵抗を小さくして速度を上げる―などを克服するものをと考え、0.2㎜の細い溝に設計。
 昨年11月に美須弥工業が製造して試作品が完成。長野市のスパイラルで試走した生駒選手は「氷をとらえた時はいつもより直進性を感じた。直進時に操作すると、ソリの後ろから流れてドリフト(横滑り)状態になった。カーブの入りは真っ直ぐ進入すると挙動が安定するが、斜めに入ると乱れる」と感想。
 スピードが出る長所の反面、安定性にやや欠けるという短所が分かった。小林社長は「もう少し溝を太くして安定感を高めたい」。武内社長は「連携してより精度を高めたい」と話している。
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 一方、長野高専機械工学科の長坂明彦教授(材料加工学、スポーツ用品工学)の研究室は4年前から、スケルトンの滑走タイム短縮を目的に研究している。現在は5年生の竹把悠さん(中野市)も研究に参加する。
 滑走中の選手の垂直・水平・進行の各方向の速度と加速度を測定、スピードと安定性を追求。長坂教授は、生駒選手らの協力を得て、データの取得と分析を行っている。6年前にもスピードスケートのブレード(刃)研究に取り組んだ。
 スケルトン用品はカナダ、ヨーロッパのメーカーが主流だが、長坂教授は「ネットワークの中で須坂発のスケルトン用品を開発し、世界のレベルに挑戦したい」と話している。
 なお、ナツバタ製作所は2年前、長坂教授らの実験協力を得て、マレットゴルフ用パターのヘッドを開発、商品化した。今回は生駒さんを通して、偶然に共同開発することになった。長野高専はイノベートSUZAKAの支援機関であり、須坂市と包括連携協定を結んでいる。
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 イノベートSUZAKAは須坂市が平成19年4月、異業種の技術者同士の連携で、富士通城下町からの脱却を目指そうと設立した産学官連携組織。構成は地元の金型設計、金物加工、鋳物、電子部品組み立てなど24社と市、信州大学、長野高専、県工科短大などが参加している。
 連携ですべての需要に応じられるフルセット型を志向すると共に、行政に提案するだけでなく、主体的な事業推進で地元産業の再構築を目指す。ぶどう作業補助具グレーバーやコイン玄米機、低床タイプリヤカー開発などの実績がある。

2012-01-01 07:01 am by 須坂新聞 - 0 コメント



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