古民家活用ワークショップ〜文化学園、東京工科大生が仁礼合宿10年目

2019-08-24 07:00 am by 須坂新聞

お知らせ icon 市が進める「蔵の町並みキャンパス事業」(古民家再生プロジェクト)に参加する文化学園大学(東京)と東京工科大学(同)の学生11人や教員らが先ごろ、4泊5日の須坂夏合宿をした。合宿所は仁礼町宇原の養蚕農家(築130年の古民家篠塚久義邸)。毎年手作りで改修を続けて10年目。今回は、近隣住民に参加を呼び掛けて「オリジナルノート」を作るワークショップを楽しんだ。
 講師は、文化学園大学の遊佐一弥非常勤講師と牧野昇造形学部准教授の2人。住民や学生、市職員、過去に参加した大学卒業生ら約20人が「糸かがりノート」作りをした。
 手製本ポケット付きノートの大きさは縦18.8cm、横12.8cm。紙を平とじに重ねて折り、紙にとじ糸を通す穴を4カ所空け、糸を通し、各自のノートを完成させた。
 近隣の男性(80代、70代)は「慣れない全部が大変だった」「難しい帳面を作らせていただいて頭の体操になった」と感想を語った。
 今合宿で学生たちは2階に上がるための木製階段を作り、固定した。指導を受けた大工職人の手伝いをしながら取り付けた。また、カフェに使う木製椅子は、デザインし、自らのこぎりを引いて8脚ほどを作った。
 学生は文化学園大学が1〜3年生9人。東京工科大学が3年生2人。
 両大学の3年生(男女)は「大学では平面のデザインが主だが、立体的な椅子や階段の作業は身になった」と述べた。
 教員と学生が寝食を共にした合宿について両学生は「普段の講義は先生のアドバイスだけだが、ここでは一緒に作業して親睦が深まり、楽しかった」。
 教員側は「滞在するためには食事や掃除、洗濯などを学生が自分たちでコミュニケーションを取らないとならない。一回りたくましく成長した。貴重な体験ができた」と合宿の成果を強調した。
 今回は、大学で事前に焼いて持参したコーヒーカップやソーサー(共に信楽焼)、カフェ名「Z=ズィー=カフェ」入りランチョンマットや、入り口にかけたのれんの他、前日にシルクスクリーンでプリントしたエプロンをかけて住民をもてなした。
 建物は明治中期の建築とされる。1階は土間の奥(北)がいろりの間。土間の右(東)は板の間、茶の間(客間)、座敷。いろりの間の右は台所、北の間(居間)、奥座敷。土間の左は馬小屋や寝間、みそ蔵があった。
 2階はわら仕事の作業場。「1階に比べて暖かく、わらでねこ、こもなどを編んだ。はしごを使って上った」(篠塚さん)。
 屋根は防火を意識して最初から瓦ぶき。蚕を飼ったので、屋根に煙出しが設置された。
 養蚕業は昭和46年まで。その後、エノキ栽培を平成6年まで続けた。ホップ栽培は昭和50年ごろまで。
 10年前の古民家再生プロジェクトの開始から関わる文化学園大学造形学部建築・インテリア学科の渡辺裕子准教授(一級建築士)は「生活に密着した人々の知恵が学べる。すすで真っ黒だった2階の壁は下地の土壁や中塗りをした。1階は、床を張り、キッチン、板の間を改修した。大工、左官の専門家の指導を受けながら貴重な経験ができた。夜の涼しさや空の奇麗さを感じ、旬の野菜の差し入れをおいしくいただき、近所付き合いに触れることもできた」。
 篠塚さんは「56災害(昭和56年)に遭ったことがご縁の始まり。水に漬かったが畳がぬれなかったのはご先祖さまのおかげ。(建物が)人に喜んでもらえてご先祖さまも喜んでいる」「地道な継続を大事にしたい」と話す。

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