念願のワイン醸造始める〜楠茂幸さん

2011-11-05 07:00 am by 須坂新聞

工業・商業 icon 須坂市新町、楠わいなりー代表の楠茂幸さん(53)は会社員から転職し、8年前に畑もないゼロから農業、ワインブドウ栽培を始めた。耕作放棄地を開墾して苗木を植え、試行錯誤しながら育てた。やがてワインブドウの品質に手応えを感じ、委託醸造したワインが評価されるように。機が熟し、このほど亀倉町にワイナリー(ワイン醸造所)を設立して自身の手による醸造を開始した。
 10月22日、完成した醸造施設で初めての仕込みを行った。「今まで(8年間のワインブドウ栽培)は準備。これがスタート」。
 会社の海外勤務で世界各地のワインに触れるにつれてワインづくりに興味を持った。「ブドウ栽培を含めて、自分がやりたい要素がすべて入っている。農業、ものづくり、自然、科学。技術や経験に加えて勘、センスも要求される」。
 当時、まだ国内産ワインは少なかったが今後に可能性を感じた。「20年後、日本ですごいワインができているかもしれない。その時に自分も(ワインづくりの)現場にいたいと思った。国産の本格的なワインをつくりたいと思った。後悔したくなかった」。
 農業経験はなかったが、オーストラリアのアデレード大学大学院に留学して2年間、ワイン醸造とブドウ栽培を学び、故郷の須坂市でワインブドウ栽培を始めた。
 実際にやってみると戸惑うことが少なくなかった。雑草の伸びが予想以上に早く、草刈り作業に追われたり、虫害や凍害で100本近くやられてしまったことも。借りた農地はほとんどが耕作放棄地でリンゴや巨峰の木、雑木などが生い茂っていた。そのたびに重機で抜根して整地し、一本一本苗木を植えた。現在は須坂市と高山村の約3㌶で10種類を栽培している。
 棚の仕立て方、日光の当て方など須高地区の風土に合った栽培方法を研究しながら手間暇かけて育て「年々いいブドウがとれるようになってきた」。委託醸造したワインが県原産地呼称管理委員会の認定を受けたり、本や専門家などから評価され、「おいしいワインができていると確信になった」。積極的に県内外のワイン会や物産展などに参加して販路開拓にも取り組んだ。
 一方で「みんなで楽しいことをしたい」とワインブドウ収穫会を開いたり、純須坂産の日本酒づくり、市グリーンツーリズム研究会など各種事業に携わってきた。自然に仲間が増えて輪が広がり、苗植えや収穫、PR、会社設立などさまざまな面で支援してくれるように。
 そしていよいよ自家醸造を始めた。「もっといいブドウ、もっといいワインと思っているうちに今になった。これからは細かいところまで自分の考えるワインをつくることができる。より高品質のブドウを栽培し、皆さんに喜んでもらえるワインをつくりたい」。
 目指すのは「北信州の土地と気候に適した栽培方法で、自然の恵みを最大限に取り込んだブドウからのワインづくり。健康的なブドウからできた高品質で本物の優しくて上品なワイン」。
   ◇    ◇
 楠わいなりーは開業を記念して13日午前11時〜午後3時、亀倉町の湯っ蔵んど北側の同所で「オープンワイナリー」を開く。1,000円で各種ワインが試飲できるほか、ジュースなどのサービス、農産物などの販売、各種屋台、体験会、抽選会などがある。午後12時半からは地元のアマチュアミュージシャンらによるライブも。

2011-11-05 07:00 am by 須坂新聞 - 0 コメント



須坂新聞


 須坂新聞はタブロイド判(20P~24P)で毎週土曜発行(年間48回)長野県須高地域(須坂市・小布施町・高山村・長野市若穂地区)で購読をいただいております。また配達地域外でも郵送にてご購読いただけます。購読料は1100円(月額/税込)です。購読お申し込みはこちらから。