便利さから離れ、自己を見直す

2005-10-09 04:20 am by 須坂新聞

お知らせ icon 須坂市豊丘寺久保の静かな山あいに座禅の研修道場「豊樂庵」がある。
 緑濃い木々と静寂さに包まれた山里の原風景が広がるこの道場に、「繁忙な日常生活から一時離れ、自己を見つめ直したい」と人々が集まり、スイッチ一つの便利な生活から離れ、自然の営みに合わせて夜明けと共に起床、まきで火をおこし、釜でご飯を炊き、精進料理を食べ、ゆったりとした空間に心身を委ねにやってくる。
 庵主の高津ドロテー(慧親・えしん・52=須坂市本郷町)さんが、住む人がいなくなった廃屋同然の農家を修繕、昨年9月に開いたのがこの研修道場。かや葺きをトタン板で覆った屋根、囲炉裏、炊事をするためのかまど、壁には手斧の跡が残る梁(はり)、温かさを感じさせる白熱電球の柔らかな光、かつてどこにでもあった農家の光景を感じさせてくれる。
 寺久保は、観音堂を上壇に構え、三軒の農家が連なり、生産・生活の場の小集落だったが、30年ほど前から住む人がいなくなっていた。
 ドイツの美しい街並みの中核都市カッセル市出身のドロテーさんはボン大学で民俗学を専攻、修士論文は日本の木地師(きじし=広葉樹のトチやブナ等から椀、盆などの漆器やシャモジなどの原形となる木地を作る仕事をする人)の研究だった。日本に移り住み23年になる。昨年3月まで長野清泉女学院短期大学の助教授を勤めた。
 臨済宗の若い僧侶の生き方に共感して2002年に、鎌倉市の臨済宗建長寺の宗務総長・高井正俊師に付き得度、自分なりに仏教の勉強を生かす場として研修道場を開いた―と言う。
 「携帯電話、インターネットの普及で街は24時間動き続けている。自然と共存する日本の文化が消えかかっている。便利な社会から一歩離れて、考える時間をもつことも大切ではないでしょうか。ずっと以前から、こういう場所を探していました」と語る。
 日本人の僧侶と結婚、高校3年と中学2年の2人の男の子がいる。「私の一番好きな言葉は『工夫』です。人間は、たくさんのことを考え、発明してきました。便利さを求めることになんの批判も不満もないが、便利さに甘えて楽だからといって考えること、工夫することという当たり前のことを親が忘れることになっては困る」と説く。
 毎週金曜日午後7時半から座禅と茶話会、10月21〜23日、11月17〜19日に2泊3日の宿泊座禅会(1泊可)を行う。訪問の際は要連絡(携帯電話080―113―113―78かTEL246―9014)。所在地は豊丘上町1937。豊丘上町の観音堂手前で県道五味池破風高原線から北に向けて寺久保橋を渡り、東側に進む。

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