【須坂経営革新塾】開発第1号機誕生その名も除草用カート「オレニノレZ」

2018-01-01 07:00 am by 須坂新聞

工業・商業 icon 須坂市内の製造業を中心とした若手の経営者や幹部らで組織し、経営に関する勉強会や視察などを実施してきた産学官連携の研究会「須坂経営革新塾」が昨年、加盟各社のアイデアと技術力を駆使してネギ畑の除草用カート「オレニノレZ(ゼット)」を作った。同塾から生まれた開発機械第1号で、10月に長野市で開かれた産業フェアin信州にも出展、須坂のものづくり技術が結集していると、大きな注目を集めた。さらに改良を重ね、今夏の商品化を目指している。
 ■きっかけ
「今年度はメンバー全員でものづくりの試作開発にチャレンジしたい」
 それは昨年5月、同塾会長を務め、15人のメンバーをまとめる新井達也さん(41、新井製作所専務)の一言で始まった。
 新井製作所は県内唯一の発泡スチロール金型メーカーで、試作からリサイクルまでの一貫生産サイクルを提案している。
 同塾最初の製品として何を作るか―。話し合いの結果、メンバー各社の持つ技術力が活かせ、須坂市の産業活性化にもつなげられると、メンバーである小林ネギ農園(幸高町)が抱える課題を開発テーマに決めた。
 「新幸福ネギ」の商標登録を持ち、良質なネギを生産している同農園は畑の除草作業がネックになっていた。ネギの間にある雑草は手作業でなければていねいに取り除けず、ネギの長い列に沿って、トータル数十kmもの長い距離を両膝をつきながら移動して行う除草と回収作業はまさに過酷な重労働。
 市販のガーデニング用カートでは腰の位置が高く除草しづらいこと、凹凸のある土壌でスムーズに移動できないこと、草の回収容器を載せることができないなどの問題があり、同農園代表の小林庄二さんから専用カートを開発してほしいと要望が出されていた。
■行動開始
 早速行動を開始した同塾は6月、試作開発委員会を立ち上げた。委員長はナディックの上野栄一社長(44)。同社は精密プレス金型設計に強みを持ち、小径パイプクロス穴を内面
からのプレスでバリなく加工する特許技術を保有する。今回はカートの各種部品の設計を担当した。
 7月の第1回試作開発検討会には、開発コンセプトに沿った手作りの評価用試作機2種類が持ち込まれた。メンバーの共通の思いは「机上の会議で椅子に座っている時間があったら、自分のところでできる部品を作ってみよう」。その意気込みが早くも形になった。
 その後、市販のガーデニング用カートによる畑での走行実験などを行い、打ち合わせや改良を重ねた結果、雑草が取りやすい低い床で、スムーズな移動ができ、回収した草を貯めるバスケットも載せられるデモ機の基本仕様が決まった。さらに作業する人の負担を軽減させ、遊び心も交えたさまざまな付加機能も加えられた。
■各社の技術
 メンバー各社は自社の強みを活かしたパーツづくりに励んだ。
 車体のフレームなどの加工はナツバタ製作所。同社は大学との共同研究にも取り組む高精度旋盤加工のプロ。小林豊社長は兄貴的存在として試作開発の推進役を果たした。
 パイプの曲げ加工や溶接は前田鉄工所。同社が手掛けるボイラーやヒーター製造のコアな技術を活用した。
 草回収用のバスケット搭載台の加工は伸商機工。同社はさまざまな機械部品やカバーなどの精密板金加工を得意としている。
 メッキは菊池電鍍金工業所が担当。同社は少量多品種に対応した各種メッキの専門企業で、自動車部品も手掛けている。
 「1日中炎天下で暑くて大変。雨の日の作業もある」との課題克服のため、扇風機、カップフォルダー、傘も備えることにした。
 扇風機の電源は太陽光。太陽エネルギー機器の開発製造販売に長年取り組むサンジュニアが担当し、最新のフレキシブル太陽光発電シートを搭載した。
 水分補給用のカップフォルダーの加工はシンエイ。電子部品の精密な検査業務の構内請け負いなどを手掛ける同社が近年立ち上げた板金事業を活用した。
 傘は倭技術研究所が担当。同社はハード・ソフト混載の各種メカトロシステムや高出力LED応用システムなどを得意としている。
【須坂経営革新塾】
 2014年に須坂市産業連携開発課が事務局となり、経営資質向上や地域産業課題の解決を図ろうと発足した産学官連携の研究会。市内事業所の若手経営幹部らで構成し、支援機関として県工業技術総合センター材料技術部門や県長野地域振興局商工観光課が名を連ねる。発足時は8社だったが、年々増加、現在は15社が加入する。
 同課を事務局とする産業活性化の組織には▽イノベートSUZAKA▽須坂地域ものづくり人材育成ネットワーク▽ICTビジネス研究会▽信州須坂産業活性化戦略会議▽信州須坂フルーツ発泡酒協議会―などもあり、多くの事業所が参画している。
《新井会長》
 会員から出されたネーミング案はなんと56もあり、感性豊かな案がずらりと並んだ。
 最終決定した「オレニノレZ」は試作開発委員会副委員長を務める協和テクノの飯川暁則社長の案。鳥獣害防除器具の開発製造販売などを手掛ける同社では「獣用心棒」「激光A(げきこうエース)」などインパクトのある商品名を付けている。
 「オレニノレ=俺に乗れ」はネギ生産者の負担を軽減させるぞ―という開発者の自信。メンバーの熱い思いが込められている。

 新井会長 こんなに早くできるとは思っていなかった。こうして形になったのは以前から勉強会や意見交換を重ねてきた成果だと思う。パーツ作りでは各社が自発的に手を挙げてくれ、各社の皆さんや市産業コーディネータの中島秀樹さんに感謝したい。小林さんも大喜びしていた。とても勉強になった。商品化に向け、さらに皆で頑張っていきたい。

2018-01-01 07:00 am by 須坂新聞 - 0 コメント



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