町並み活用策など課題〜須坂のまちづくりでパネル討論

2012-10-27 07:00 am by 須坂新聞

まちづくり icon 須坂景観づくりの会(小林義則理事長)が先ごろ、シルキーホールで開いたパネルディスカッション「須坂のまちづくりのこれまでとこれから」で、小林理事長は「信州須坂町並みの会が25年前から活動して古い町並みや歴史的建造物が残ったが、今後はいかに活用するかが課題」。三木市長は「市民自らがいいまちと誇りに思わないと観光客は来ない。潜在力を磨き、他市町村との広域連携を模索して共に発展を目指したい」と述べた。
 第一部で講演した斉藤康則東北学院大学経済学部准教授と小林理事長、三木市長の3人がパネラーを、同会監事の若狭清史さん(日本地域科学総合研究所理事)がコーディネーターを務めた。
 若狭さんは「持続可能な社会に必要なものは①アイデンティティー(独自性)②オープンスペース(喜びや感動の共有)③食、住まい(歩いて生活できるコンパクトシティー)④ハウジング(工夫を凝らした個性的な家)⑤自動車削減のための交通政策⑥自然と共生⑦省エネ省資源(伝統的技術を駆使した環境負荷の低減)―といわれる。須坂市に当てはめ、問題の共有化が大事」と指摘した。
 斉藤准教授は「まちづくりは公害など危機感から始まることが多い。高齢化などで頑張ることができないコミュニティーにどう手を差し伸べるかが課題」「まちの価値評価は外と内からあり、まち探し、まち歩きをいかに一緒にやっていくかが大事。歩くペースや自転車の目線で見えてくるまちを大切にする」「欧州は石の文化、日本は木の文化。建物の寿命が短いといわれるが、改修や耐震補強をして外側は残し、内は現代風に」と述べた。
 三木市長は「自治とは本当に困っている人を救うことと、市民自身に自活力が生まれるようにすること。父母のように厳しく、優しくが行政の果たすべき役割」「私のモットーは①須坂市のために②市民の立場で市民のために③声なき声を聴く―ことで、知識や経験に頼らず無私で考えること。本当に困っている人は声に出ない。市職員が感性で感じ、より多くの人に会うことが大事」と述べた。
 小林理事長は「須坂の歴史や文化を学び、町並みガイドをする中で郷土を愛することは郷土を知ることと実感している」「まちに元気がない、観光地に観光客が来ないことが直面する課題。先人の遺産をいかに活用するかがこれからのまちづくり。地元の人が須坂を好きになると、観光客はその姿を見てまちの魅力を感じてもらえる」と述べた。
 会場で熱心に聴講する市民からは「町並み修理修景事業は成功したのか。まちづくり事業のビジョンを聞きたい」「まちづくりの成功例と失敗例は何をもっていうのか」との質問が出され、パネラーは各自答えた。
 第一部の講演「地域社会のこれまでとこれから」で斉藤准教授は「60年代、70年代は作為阻止型や作為要求型の過激な住民運動の時代だった。80年代、90年代は組織・コミュニティー活動の参加型・自治型活動の時代。90年代後半以降は阪神大震災以後のボランティア活動や活動事業型の運動が多く見られた」
 「昨年の3・11以降は被災者が自らボランティア活動する姿が見られ、人間関係がコミュニティーの中で崩れようとしている。50年前に水俣病の地域で起こったことが今なお起きている。被災の日常化、風化の危機感の中で投げかけた一番大きなものは、政府や専門家の言うことは信じられなくなったということ。市民自身が科学的知識を獲得していく市民科学が大きく問われている」
 「被災者の自立は経済だけでなく、お茶を飲んで話す、漬物を漬ける生活習慣を取り戻すことから始まる」と分析結果を説明した。
 出席者は大学生や一般市民、市職員ら150人を超える満場の入りだった。

2012-10-27 07:00 am by 須坂新聞 - 0 コメント



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